図画工作・美術科は,子どもの成長を願い,長い目で見守ることができる。(生徒指導担当が,図画工作・美術科教師に多いのは,そのためでしょう。)子どもは,自分の想いや願いを色や形に託して表現する。教師は,子どもたちの作品の見方を深めることで,その子の内面や成長を感じ取ることができる。
まさに,感性を大切にする教科である。 ある研究大会の分科会(幼小中連携部会)でのことである。その分科会のテーマが「幼稚園・小学校・中学校との連携によって相互によりよい成長を図る特別活動」であった。その話し合いの中で,次のようなやりとりがあった。 ある中学教師は「小学校の集会活動を見て,態度が立派なのに驚いた。中学校では,生徒が真っすぐ並べない。」という話をされた。その中学校では,体育館にきちんと並べるように,最初から椅子に座らせるとのことだった。 中学生が整列できないというのである。 また,「小学校では,中学校との引き継ぎの時に,子どもたちの問題を隠してしまう傾向にある。」というのである。入学してから問題行動が起きると,小学校でも問題があったことがわかるケースが多いとのことある。それに対して,小学校の先生は,「卒業生のこれからを考えると,そういう目で見られてしまうことが心配で,どうしても引き継ぐことができない。」というのである。(そこには,幼稚園の先生は,一人も出席していなかった。) そして,小学校を立派に卒業した子たちが、中学校に入学すると,「そんなこともできないのか。」と言われることが多いそうである。たとえば、忘れ物やチャイム席など,小学校では「できていた」ことが,中学校では「できなくなる」ようである。これは,どの中学校でも,数十年前から言われていることのようである。(もちろん,幼稚園・保育園や小学校において,長い間,学習に対する基本的な姿勢をしっかり指導されてきているはずです。) 実は,同じことが,幼稚園・保育園から小学校へ入学してきた時にもあてはまる。(このことは,意外と中学校の先生方は知らない。)年長組で何でもできた園児たちが,小学校入学すると不安定になり,安定した学校生活を過ごすができなくなるケースが見られる。 これは,どういうことなのか。 ここで問題なのは,小中学校の教師間に「子ども観」の相違がないかということである。幼小中が互いに批判し合っては,連携は生まれないと思います。連携するためには,互いの子ども観を理解しなければなりません。 幼稚園・保育園は,保護者の元を離れたばかりの乳児・幼児たちの集団です。何から何まで手がかかって当然です。そこでは,自立のための基礎が養われます。子どもたちは,幼児期から少年期へと成長するのです。 小学校の6年間は,義務教育の基本的な学習態度や社会性の基礎が,じっくりと培われます。個人差があって当然です。たとえ,幼児期に学習したことができなくても,もう一度やり直すことで,以前よりも早く身につきます。例えば,自分の身のまわりのことが,あたり前にできるようになります。 中学校の3年間は,思春期の入り口にあり,心と身体が急激に変化します。生徒一人一人に自我が芽生え始めます。そのため教師は,一人一人の生徒に対する指導で悩むことが多いと言われます。 それぞれの学校・学年によって発達段階があり,「発達課題」の違いがあります。 一人一人の子どもの成長を見つめることができる教科があります。 それが、図画工作・美術科です。私たち教師が,子どもの作品を深く見つめることで,その子の内なる心やゆっくりとした成長に対し,温かい目をもつことができます。造形教育の大切さを理解しようとする教師は,幼小中,個々の子どものもつ発達課題を理解しようとすることができます。もしも,この大切な教科を義務教育でおろそかにすると,子どもたちの心身の健やかな成長にとって,よい影響はないと確信しています。 さらに言えば,義務教育にとって,図工・美術科は,なくてはならない教科であると考えます。 (柿崎雄二・39歳・小学校教諭)
by zoukeidaiji
| 2005-10-31 22:09
| 小学校
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